雇用契約書の記載で覚えておくべきポイント
では、雇用契約書に書いておくべき内容を見ていきましょう。パートタイム労働法第6条第1項では、次の労働条件を労働者に対して明示する必要があります。
労働者に文書で通知するべき事項 (パートタイム労働法施行規則第2条第1項)
一 昇給の有無
二 退職手当の有無
三 賞与の有無
四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口※
※相談担当の氏名、役職、部署など
このなかでも留意すべきなのが、2015年4月から追加された第4号です。相談窓口に詳しい規定はありませんが、アルバイトスタッフが働く店の店長、直属の上司などではなく、本社人事部などが想定されます。しっかり検討しておいてください。
事業内容などによって、雇用契約書に記載すべき内容は変わります
上記で紹介した4つの項目以外にも、服務規程などの事業内容やスタッフの労働状況に応じて別途記載するべき内容が出てくるでしょう。例えば、情報漏えいの対策です。労働契約の期間中はアルバイトにも秘密保持の義務が課されますが、一般的にアルバイトスタッフがその義務を知っているとは考えにくい。注意喚起のためにも、秘密保持義務を記載するべきでしょうね。これは、会社のノウハウや顧客情報を守るためにも重要です。
職場によっては、いわゆる「バイトテロ対策」として、携帯電話の取扱い、SNSの利用規制を明言しておくべきところもあるでしょう。職種や業種によって、押さえておくべきところを精査してみてください。
繰り返しになりますが、書面を取り交わす際は、「雇用契約書で確保すべき証拠」で挙げた「通知」「明示・説明」「理解」「合意」があったかがポイントです。「完全な合意」つまり、アルバイトが「労働条件・契約内容について、しっかり説明を受け、内容を理解し、合意をした」ということを証明できるようにしてください。「強制的に雇用契約書にサインさせられた」と言われるような状況に陥ってはいけません。
雇用契約を結ぶ際に最も良い流れは、事前に雇用契約書を配布し、なるべく対面で説明し、スタッフの内容の理解度や質問の有無をきめ細かく確認することです。なおかつ、その場ですぐに契約を交わさず、2週間程度経ってからサインをしてもらうようにしてください。クーリングオフと同じく、アルバイトに契約や労働について考える猶予期間を与えるのです。万一の訴訟リスクを考え、その際のやり取りを録音してもいいでしょう。
アルバイトスタッフをはじめ、労働者は労働条件に関して説明を受ける権利があります。そこで雇用主と認識の不一致や齟齬があれば、後々トラブルを招くことにもなりかねません。新しくスタッフを迎えるその日から、正しく雇用契約書を取り交わし、リスク低減につなげることが大切です。
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小山内行政書士事務所代表
契約書作成業務を専門とし、契約実務を主軸とした、ビジネスモデルの明確化、業務プロセスの効率化、リスク対策等の企業向けコンサルティングを行っている。著書に『改正労働者派遣法とこれからの雇用がわかる本』『実務入門 これだけは知っておきたい契約書の基本知識とつくり方』がある。
小山内行政書士事務所
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