なぜ、働き方を変えるのか?雇用形態別:仕事の選択基準

  • 求職者動向
アルバイト、派遣社員、契約社員、正社員。雇用形態の選択は、その後の働き方に大きく影響を与える重大なもの。何を求めるかによって、選択が違ってくるだろう。
さらに、たとえば同じ契約社員希望でも、現在アルバイトとして働く者と現在も契約社員として働く者とでは、求めることが異なるかもしれない…。何を求めて、雇用形態を変更 または継続したいのか・・・。
そこで今回は、”現在の”雇用形態にも着目したうえで、希望雇用形態別のニーズを探ってみたい。

調査概要

■調査方法:インターネットアンケート
■調査対象:北海道・首都圏・東海・関西・九州在住15~34歳男女
現在、「高校生、短大・専門学校生、大学生、大学院生、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、無職の人」且つ「過去1年以内にアルバイト・パート、派遣社員、契約社員の仕事に就いたことがある人」 で、今後も「アルバイト・パート、派遣社員、契約社員」での就労を希望している人
■調査期間: 2007年2月
■サンプル数: 6,941名
■ウェイトバック:対象者サンプル数が実際の人口の構成比と異なるため、総務省統計局の「平成14年就業構造基本統計調査」による非正規雇用就業人口に基づき、「属性・性別」ごとにウェイトをかけた。

1 現在の雇用形態/希望の雇用形態

男性フリーターの6割は「正社員」を希望

まず、非正規雇用者の 現在の雇用形態と希望の雇用形態から見ていこう。
属性別に現在のアルバイト・パート、契約社員、派遣社員の分布をみると(図1-1)、どの属性でも「アルバイト・パート」がもっとも高い。特に学生(高校生や大学生)では90%以上、主婦では80%近くにのぼる。一方フリーターは、男女とも60%前後で、その分「派遣社員」と「契約社員」の比率が高い。フリーター男性では「契約社員」、フリーター女性では「派遣社員」が多い傾向だ。
次に、希望の雇用形態を見てみよう(図1-2)。学生(高校生や大学生)では「アルバイト・パート」希望が突出。一方フリーターでは、「アルバイト・パート」は2~3割程度で、「正社員」の希望が最も高い。特にフリーター男性では6割以上だ。主婦では、「アルバイト・パート」が過半数を占めるものの、「派遣社員」が2割、「契約社員」が1割弱、「正社員」が2割弱と分散傾向が見られる。

2 アルバイト・パート希望者が、仕事選択時に重視するポイント

時間の融通やイエチカを最優先できるのがアルバイト・パート

ではここからは、希望の雇用形態別に、その雇用形態に就く際の重視点を探ってみたい。まずは、 アルバイト・パート希望者から(図2-1)。希望者全体(棒グラフ部分)でもっとも多かったのは「給与が高いこと」(16%)。以下、「時間の融通がきくこと」(14%)、「勤務地が自宅から近いこと」(12%)、「仕事内容に興味が持てること」(9%)と続く。
次に、これらを現在の雇用形態別に細かく見ていこう(折れ線グラフ部分)。同じアルバイト・パート希望者であっても、現在の雇用形態によって重視点も異なるかもしれない。

〈現在の雇用形態別〉

●現在も「アルバイト・パート」の場合

「アルバイト・パート希望者」の約9割を占めるのが、この「現在もアルバイト・パート」の人たち。給与のほか、時間の融通やイエチカ(家や学校から勤務地が近いこと))も重視するのは、まさに「アルバイト・パート」らしい特徴といえる。

●現在は「派遣社員」の場合

「アルバイト・パート希望者」の5%程度を占める。重視項目トップは「時間の融通」(18%)で、「給与が高いこと」(14%)をわずかに上回っている。平均的に時給が高いと思われる派遣社員が、アルバイト・パートへと転向するのは、ずばり時間の融通を最優先してのことなのだろう。

●現在は「契約社員」の場合

「アルバイト・パート希望者」の2%程度を占める。重視項目「時間の融通」が突出(26%)。以下、「勤務地が近いこと」(22%)、「給与が高いこと」(15%)と続く。たとえ時給が高くないとしても、時間の融通やイエチカに魅力を感じて、アルバイト・パートへの転向を考えている姿が想像される。

3 派遣社員希望者が仕事選択時に重視するポイント

最大の魅力はやっぱり給与。ただし派遣継続層は仕事内容も重視

続いて、派遣社員希望者の場合(図3-1)はどうだろう。希望者全体では「給与が高いこと」(20%)がトップ、以下「勤務地が自宅から近いこと」「仕事内容に興味が持てること」と続く(ともに11%)。先に見た「アルバイト・パート希望者」と比べると、1位の「給与」が突出しているのが特徴だ。

〈現在の雇用形態別〉

●現在は「アルバイト・パート」の場合

「派遣社員希望者」の3割程度を占めているのが、この「現在はアルバイト・パート」の人たち。「時間の融通」や「イエチカ」も高めではあるが、「給与」がトップで突出している。また、「仕事の内容が自分に合っている」が6%と低い。やはり、高い給与を求めて派遣を希望しているのだろう。

●現在も「派遣社員」の場合

「派遣社員希望者」の7割近くを占めている。重視点トップは「給与が高い」、そして2位には「「仕事の内容が自分に合っている」(13%)。まさに派遣社員らしい特徴といえるだろう。

●現在は「契約社員」の場合

「派遣社員希望者」の5%程度を占める。回答者数23なので参考値とする。「給与が高いこと」(24%)・「時間の融通」(15%)がとりわけ高いのが特徴。

4 契約社員希望者が仕事選択時に重視するポイント

ほかの雇用形態にとっては、給与のほか仕事内容も魅力

次に、契約社員希望者を見てみよう(図4-1)。トップは「給与が高いこと」(16%)。以下、「仕事の内容が自分に合っている」(12%)、「仕事内容に興味が持てる」(9%)、「やりがいのある仕事である」(9%)と、仕事内容に関した項目が並ぶ。これは、アルバイト・パート希望や派遣社員希望には見られなかった傾向だ。逆に「時間の融通」や「勤務地が近い」といった要素は、契約社員という形態にはあまり期待していないようだ。

〈現在の雇用形態別〉

●現在は「アルバイト・パート」の場合

「契約社員希望者」の過半数を占めているのが、この「現在はアルバイト・パート」の人たち。「やりがいのある仕事である」(12%)が、トップの「給与が高いこと」(13%)とほぼ同程度。また「仕事が内容に興味が持てる」も高い。アルバイトから契約社員へうつる人たちは、給与だけでなく仕事内容ややりがいを強く求めていることが分かる。

●現在は「派遣社員」の場合

「契約社員希望者」の2割近くを占めている。「仕事の内容が自分にあっていること」(14%)、「自分でもできそうな仕事であること」(13%)がほぼ同程度でトップ。ついで「給与が高いこと」。仕事内容を重視、しかもやりがいや興味というよりは、自分とのフィット感に重点が置かれている点が興味深い。

●現在も「契約社員」の場合

「契約社員希望者」の3割近くを占めている。「給与が高いこと」(22%)が突出。一方で「やりがいのある仕事である」がわずかに1%程度。現在契約社員の人たちが、続行して契約社員を希望する場合、それは何よりも給与を重視するゆえという傾向が見られる。

5 正社員希望者が仕事選択時に重視するポイント

給与よりも仕事内容の傾向がつよいなか、契約社員からの転向者はやはり給与第一

最後に正社員希望者はどうだろう(図5-1)。重視点1位は「やりがいのある仕事であること」(14%)。以下「給与が高いこと」、「仕事内容に興味が持てること」と続き、仕事内容重視の傾向がうかがえる。

〈現在の雇用形態別〉

●現在「アルバイト・パート」の場合

正社員希望者」の6割以上を占めているのが、この「現在はアルバイト・パート」の人たち。「やりがいのある仕事であること」(15%)が突出。2位は「仕事内容に興味が持てること」(10%)、3位は「給与が高いこと」。やりがい重視の傾向が強い。

●現在「派遣社員」の場合

「正社員希望者」の2割を占めている。「やりがいのある仕事である」(14%)・「給与が高いこと」(12%)がほぼ同じ。やりがいと給与の両方を求めているとも言えるだろう。

●現在「契約社員」の場合

「正社員希望者」の2割を占めている。「給与が高いこと」(15%)が突出する一方、「やりがいのある仕事である」や「仕事内容に興味が持てる」は、他の雇用形態よりも低い。契約社員の給与にこだわる傾向が、ここでも見られた。

今月のまとめ

今月のまとめ 雇用形態を選択する際、現在の雇用形態の違いがそのまま選択基準の違いとして少なからず現れることがわかった。それは採用側からすれば、同じアルバイト・パート採用にしても、その採用条件の中身によって、現在アルバイト・バートの人にフックするのか、現在契約社員にフックするのかが変わってくるということを意味する。以下に今回のアンケート結果の要旨を列記した。より効率的な採用計画のヒントになるはずだ。―アルバイト・パート希望者の場合:総じて時間の融通やイエチカが魅力。ただし、現在もアルバイト・パートに従事する層では、時給が選択基準のトップとなる。一方、現在は派遣や契約社員として働く層では、時給よりも時間の融通やイエチカを優先している傾向がある。―契約社員希望者の場合:総じて給与のウエイトが高い。ただし、現在アルバイト・パートの層は仕事のやりがい、現在派遣社員の層は仕事への適正をも求めて、契約社員への転向を希望する傾向が強い。一方、現在も契約社員である「契約継続層」は、あくまでも時給最優先の様子。

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