属性別:希望の月収と働き方

  • 市場動向

年齢やライフステージによって、収入として欲しい金額や、その使いみちもさまざま。被雇用者は、1ヶ月でどのくらいを稼ぎたいと思っているのだろう。今回は、そんな「月収」からのアプローチで、属性ごとのバイト生活をさぐってみたい。

今月のポイント

  • 高校生と大学生の違いは希望月収以外にあり
  • 主婦の希望月収は「扶養範囲」がポイント
  • 希望月収10万円、25万円がフリーターを分割する

調査概要

■調査方法:インターネットアンケート
■調査対象:北海道・首都圏・東海・関西・九州在住15~34歳男女
現在、「高校生、短大・専門学校生、大学生、大学院生、アルバイト・パート、派遣社員、契約社員、無職の人」且つ「過去1年以内にアルバイト・パート、派遣社員、契約社員の仕事に就いたことがある人」 で、今後も「アルバイト・パート、派遣社員、契約社員」での就労を希望している人
■調査期間: 2007年2月
■サンプル数: 6,941名
■ウェイトバック:対象者サンプル数が実際の人口の構成比と異なるため、総務省統計局の「平成14年就業構造基本統計調査」による非正規雇用就業人口に基づき、「属性・性別」ごとにウェイトをかけた。

1 希望の月収、その使い道

ではさっそく、下の(表1-1)で、属性ごとの「希望最低月収」をみてみよう。
まず高校生だが、ボリュームゾーンは月収「3-5万円」(35%)、「5-10万円」(34%)のようだ。10万円以上欲しいという人は、わずか1割未満にとどまる。働ける時間が放課後や週末に限られていることを考えれば、現実的な金額といえるのかもしれない。
次に大学生はどうだろう。高校生に比べて「3万円未満」の割合がぐっと減り(10%)、代わりに「10-15万円」が増えている(9%)。しかし、それでも、高校生同様、「3-5万円」(35%)、「5-10万円」(36%)が大多数を占めているという特徴がみられる。
ではフリーターはどうか。高校生・大学生とはまったく異なり、「10-15万円」「15-20万円」「20-25万円」がそれぞれ約2割強ずつを占めてる。高校・大学生ではごくわずかだった20万円以上(「20-25万円未満」+「25万円以上」)の割合も、4割近くにのぼる。
最後に主婦だが、こちらは「5-10万円未満」に過半数が集中した。おそらく、扶養適用内ぎりぎりの収入が望ましいのだろう。

表1-1 属性別 希望最低月収

では、これだけの収入を得て、彼らはどのようなことに使っているのだろうか。下表(1-2)をみると、属性によって、使い道が大きく異なることがうかがえる。
たとえば、高校生と大学生。ともに「衣服や雑貨などのファッション費用」と「貯金」がトップではあるが、高校生がそのほかの使い道はどれも3割未満なのに対し、大学生は「食事会や飲み会などの外食費」も大きくなる。また、一人暮らしをはじめるケースもあってか、「日常の食費」も高校生の2倍だ。希望月収は高校生も大学生も「3-5万円未満」「5-10万円未満」が多いということは先に述べたとおりだが、その使い道はやはり違っているようだ。
一方、フリーターは「日常の食費」や「携帯電話・インターネットなどの通信費」「家賃・光熱費」など 日常生活にかかる費用が、ほかの属性に比べて高い傾向が見られる。
そして最後に主婦。トップは「貯金」、次に「衣服や雑貨などのファッション費用」。「日常の食費」よりも、これら2項目が高いのは、意外な結果かもしれない。

表1-2 属性別 アルバイト収入の使い道(複数回答)

2 高校生の9割は時給900円でOK

それではここからは、属性ごとに、その働き方もあわせて、詳しく見ていこう。

まずは高校生から。
した(表2-1)は、上記にも掲載した「希望最低月収」について、男女別にみたものだ。男子高校生に比べて女子高校生の方が「3万円未満」「3-5万円未満」が若干多いが、全体の分布にそれほど大きな違いはない。「3-5万円」「5-10万円」が大多数(7割程度)を占めている。
今回は、この高校生を、希望月収「5万円以上」と「5万円未満」に分けて、さらに詳しく分析する。

表2-1 希望最低月収 男女別

次に、働く日数や時給をみてみよう。
下の(表2-2)は、1週間あたりの勤務日数をあらわしている(もっとも最近就いた仕事について)。回答者数が若干減っているのは、一度も働いたことがない人を除外しているためだ。
これをみると、高校生は「週1日未満」「2日」「3日」「4日」「5日」とほぼ均等に分散していることがわかる。これを希望月収別に見ると、5万以上の層は、5万未満の層よりも、全体的に日数が多い傾向にある。が、それでも「4日」が最も多いというように、希望月収によって それほど大きな違いはないといえる。

表2-2 もっとも最近働いたアルバイトの勤務日数(1週間)

続いて(表2-3)で時給をみてみよう。高校生では「700-800円未満」がボリュームゾーンで、9割近くが「900円未満」という状況。こちらも希望月収別に見てみると、5万以上の層の方が全体的に高い傾向にあるものの、「700円未満」は同じ25%と それほど大きな違いはない。

表2-3 もっとも最近働いたアルバイトの時給

日数・時給ともに、希望月収額によってあまり違いが見られないのは、実は高校生特有の傾向だといえる。これから紹介する大学生やフリーターでは、この希望月収による違いが、働き方にも顕著に現れている。

3 希望月収5万円が大学生のボーダーライン

では次に大学生をみてみよう。

下(表3-1)は、高校生と同じく、「希望最低月収」について、男女別にみたものだ。男女でそれほど大きな違いがあるわけではないが、若干、男子大学生のほうが高い傾向がみられる。

大学生も高校生同様に、希望月収「5万円」を区切りに、「5万以上」と「5万未満」の層に分けて詳しくみていく。

表3-1 希望最低月収 男女別

では、働く日数や時給はどうだろう。
下の(表3-2)で、1週間あたりの勤務日数をみると、大学生は「週2日」「3日」が3割弱ずつで最も多い。
これを希望月収別に見ると、5万円以上の層は、5万円未満の層よりも、日数がかなり多いことが分かる。5万円未満の層では半数以上が「週2日以下」であるのに対し、5万円以上の層ではわずか3割程度。代わりに「4日以上」が4割も占めている。

表3-2 もっとも最近働いたアルバイトの勤務日数(1週間)

続いて(表3-3)で時給をみてみよう。大学生では「800-900円未満」が最も多く25%。また、高校生では9割近くを占めていた「900円未満」は、半数程度にとどまっている。
これを希望月収別に見てみると、5万以上の層では、「900円未満」が40%程度で、5万未満の層よりも15ポイント以上少ない。

表3-3 もっとも最近働いたアルバイトの時給

全体的に、希望月収の多い層ほど、高い時給で、多くの日数働いているという傾向が見られる。大学生になると、高校生よりもアルバイトの選択肢が広がる。自分の欲しい金額にあわせて、条件やシフトを選んでいる姿がかいまみられる結果となった。

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4 フリーターの希望勤務日数は週5日。時給は…

では次にフリーターを見てみよう。
下(表4-1)を見ると、高校生や大学生同様に、男性の方が女性よりも希望額が多い傾向。
フリーター全体として、希望額が分散しているので、ここからは月収希望「10万円未満」「10-25万円未満」「25万円以上」に分けてみていくことにする。

表4-1 希望最低月収 男女別

次に、働く日数や時給はどうだろう。
下の(表4-2)で、1週間あたりの勤務日数をみると、フリーターは「週5日」が大多数(6割)を占めている。
これを希望月収別に見ると、10万円未満の低い層では、極端に日数が少ないことが分かる。「5日」は4割以下、「3日未満」が過半数にものぼる。
希望額が多いほど日数も多く、25万円以上の層では8割以上が「5日以上」という結果だ。

表4-2 もっとも最近働いたアルバイトの勤務日数(1週間)

続いて(表4-3)で時給をみてみよう。フリーター全体でみると、時給はかなり分散している。
これを希望月収別に見ると、かなりの違いが現れる。希望10万円未満の層では時給「700-800円」と「800-900円未満」で6割弱を占める一方、25万円以上希望の層では4割以上が時給「1500円以上」。
同じ“フリーター”といっても、その中身はかなり異なっているようだ。

表4-3 もっとも最近働いたアルバイトの時給

5 「扶養範囲内」が主婦の命題

最後に主婦の特徴をみよう。
下(表5-1)は、最初に掲載した「希望最低月収」で主婦だけ取り出したもの。
主婦は、扶養適用範囲内で働きたい人が多いためか、月給「5-10万円」が半数を占めている。
そこで、「10万未満」と「10万以上」の二つの層に分けて、働き方をみていくことにしてみよう。

表5-1 希望最低月収

次に、働く日数や時給はどうだろう。
下の(表5-2)をみると、主婦は「週5日」が主流のようだ(過半数)。
これを希望月収別に見ると、10万円以上の層では「5日」が7割以上となる。

表5-2 もっとも最近働いたアルバイトの勤務日数(1週間)

続いて(表5-3)で時給をみてみよう。主婦全体でみると、「700-800円未満」「800-900円未満」がボリュームゾーン。
希望月収別に見ると、希望10万円未満の層では「700-800円」「800-900円未満」がさらに多く、あわせて半数以上を占めている。一方で希望10万円以上の層では「1500円以上」が2割弱。

表5-3 もっとも最近働いたアルバイトの時給

主婦の非正規雇用事情として、扶養範囲内での収入が望まれるため、月収10万円未満が大多数ではある。そうした主婦たちは、時給700-900円くらいの仕事で週4~5日程度働いているようだ。
しかし一方で、それ以上の収入を望む主婦たちもいて、そうした層は、比較的時給の高い仕事に週5日従事している。

今月のまとめ

高校生と大学生の違いは希望月収以外にあり

希望月収ではあまり大きな差が見られない高校生と大学生。しかし、その使い道を比較してみると、大学生は「飲み会などの外食費」、「日常の食費」が激増している。また、直近のアルバイト時給が全体的に高額になっていたり、希望勤務日数が希望月収によって変化したりと、より働くことへの自由度は高まっているようだ。

主婦の希望月収は「扶養範囲」がポイント

主婦の希望月収は10万円以下に集中している。これが、扶養範囲内での収入を望む結果であろうことは想像に難くない。一方で、扶養範囲外の高収入を望む主婦もおり、その層は比較的高時給で働いているようだ。どちらも週5日の勤務が人気だが、月収10万円以下を希望する層には週3日、4日を望む声も高い。

希望月収10万円、25万円がフリーターを分割する

8割弱が月収10万円以上を希望と、他属性に比べて高収入を望むフリーターたち。しかし、希望月収10万円未満では週5日勤務希望者は約半数に留まるのに対して、希望月収10万円以上では8割近くが週5日以上勤務を望んでいる。さらに、希望月収が25万円以上になると、それまで1割以下だった「直近のアルバイト時給:1500円以上」が4割を超えるという変化が見られる。

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