アルバイト掛け持ちの実態調査/新たな採用対象としての「掛け持ち希望者」

  • 求職者動向

 

厚生労働省が発表するパートの有効求人倍率(季節調整値)が2011年11月、0.94まで上昇した。求職者一人あたりの求人件数が増えているということであり、採用側としては採用が困難になってきている。求めるアルバイト・パート人材を確保するには、新たな求職者層も視野に入れ、採用対象の幅を広げていく必要があるだろう。
そこで今回は、複数のアルバイト・パート等の仕事を掛け持ちしている就業者に着目し、調査を実施。彼らを1つの採用対象ととらえた場合、どのようなアプローチが有効なのかを探った。

今月のポイント

  • 掛け持ち経験者のうち、学生2割、主婦3割
  • メインの仕事と同職種での掛け持ちが多い。
  • 掛け持ちする理由は、約半数が「生活費を補うため」
  • 仕事選択の際、学生は「給与金額」、主婦・フリーターは「勤務時間」を重視
  • 学生は週末、主婦は平日、フリーターは平日・週末関係なく働きたい

調査概要

  • 調査名:複数就業者の求職意識・行動調査
  • 調査期間:2011年9月16日~21日
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査対象:15~59歳の男女で以下の条件に該当する人
    (現在、収入になる仕事を行っており、過去1年以内にその仕事を行いながら、ほかの仕事を行ったことがある人)
  • サンプル数:500

1 掛け持ち経験者の属性

掛け持ち経験者のうち、学生2割、主婦3割

今回の調査では、まず「現在、収入になる仕事を行っている人のうち、その仕事を行いながら、過去1年以内に他の仕事を行ったことがある人(以下、掛け持ち経験者)」を抽出した。その結果、性別では女性の方が67.4%と多く、属性で分類すると学生が23.0%、主婦が33.2%、フリーターが20.8%となった。また、年齢別では、20代(33.2%)と30代(23.2%)が多く、合わせて56.4%を占めた。

同系の職種で掛け持ちをするケース多し

次に、どんな仕事を掛け持ちしているのか、具体的な職種を調べてみたところ、概ね、メインとして就いている仕事の職種と同じ職種を選んでいることがわかった。(グラフ1)

やはり、これまで経験を積んできた職種になじみがあるせいか、「もう1つ、何か仕事を掛け持ちしたい」と考えたとき、まずは同職種のまま別の職場で働こうと思うようだ。また、業務内容が似ていれば、新しく覚えることが少なくて済むメリットもあるだろう。

最も同職種を選ぶ傾向が強いのは「講師・インストラクター」で41.0%であった。また、これに次ぐ「事務・入力・受付」(32.4%)、「軽作業・ラインスタッフ」(32.1%)、「サービス」(31.4%)も同職種を選ぶ傾向が強い。

一方で「コールセンター」(4.5%)、「ファーストフード」(0.0%)、「アパレル販売」(9.1%)は、あまり同職種の仕事を掛け持ちしていない。「メインの仕事×掛け持ちの仕事」の組み合わせで多いものは、それぞれ「コールセンター×フード」、「ファーストフード×サービス」、「アパレル販売×フード」という結果になった。

このほか、掛け持ちバイトの具体的な職種を回答したフリーアンサーでは、「通訳」や「保育」など専門的な知識を要する職種も目立った。

グラフ1 掛け持ちをする際の職種の組み合わせ

2 掛け持ちする理由と仕事探しの重視点

全体の約半数が「生活費を補うため」に掛け持ちする

何のためにアルバイトの掛け持ちを始めたのかを聞いたところ、学生、主婦、フリーターのいずれも総じて多かった動機が「生活費を補いたかったので」で、全体の48.8%を占めた。次いで「趣味に使うお金が欲しかったので」(31.2%)、「貯金を増やしたかったので」(23.6%)が理由として上位に挙がっている。

なかでも「生活費を補いたかったので」の割合が高かったのがフリーターで51.0%。主婦は、「自分のスキルを生かせるので」(18.1%)、「周りの人に誘われたので」(13.9%)、「視野を広げたかったので」(12.7%)を選ぶ割合が、他の属性より高い。主婦の場合、生活費だけでなく、周囲との付き合いや自分のスキルを生かせる場所で働きたいという意欲が、掛け持ちのきっかけになっているようだ。学生は「趣味に使うお金が欲しかったので」「交際費が欲しかったので」が他の属性よりやや高かった。(グラフ2)

学生は「給与金額」、主婦・フリーターは「勤務時間」を重視

掛け持ちするアルバイトを探す際、重視するポイントを質問すると、学生は「給与金額」が68.7%と最も高かった。フリーターと主婦は「勤務時間」が最も高く、それぞれ63.5%、59.0%であった。それに続くのが「仕事内容」で、主婦56.0%、フリーター52.9%となっている。

これらの結果から、学生は趣味や交際費を稼ぐため、少しでも時給の高いアルバイトを求めていることがわかる。一方、主婦は給与にはそこまでこだわらず、時間さえ合えば、あとは仕事内容で厳選する傾向が強い。また、フリーターはメインのアルバイトとうまくかみ合う時間を優先しつつ、給与と仕事内容のバランスを考えて仕事を選んでいると思われる。(グラフ3)

グラフ2 掛け持ちを始めた理由

グラフ3 掛け持ちする仕事を探すときに重視する点

3 掛け持ちする際の勤務条件

必要なときだけ単発か、継続的な掛け持ちか

メインの仕事に加え、新たにプラスして掛け持ちする仕事の勤務条件として、どの属性にも多かったのが「必要なときだけ短期的に掛け持ちする」人で50.4%。「特定の季節や時期に集中して掛け持ちする」(13.0%)を足すと63.4%となり、約6割以上が単発の仕事を掛け持ちとして選んでいることがわかる。特に、学生は「特定の季節や時期に集中して掛け持ちする」(16.5%)が他属性よりも比較的多くなっており、大学の学事日程に合わせ、休暇等に集中して複数のアルバイトを行っていると思われる。

一方で、「1つの掛け持ち仕事を長期間にわたって行う」も3割を占める。特に、フリーターは32.7%と、継続する傾向が高めとなっている。(グラフ4)

学生は週末、主婦は平日、フリーターは平日・週末関係なく

次に、掛け持ちしているアルバイトを、一週間のうちの何曜日に入れているかについて見ると、学生は週末に行っている傾向が高く(「主に週末に行っている」40.9%)、主婦は「主に平日に行っている」が45.8%と多かった。フリーターは「平日・週末関係なく行っている」が36.5%、次いで「主に平日行っている」が34.6%となっており、他の属性に比べると、頻度や曜日に縛られにくいことがわかる。(グラフ5)

掛け持ちしているアルバイトの勤務に入る時間帯については、どの属性も「朝(8時~12時)から」が最も多く、主婦46.4%、学生31.3%、フリーター32.7%となった。ただし、学生とフリーターでは、「夕方(16時~20時頃)から」の時間帯も、それぞれ27.8%、30.8%と、朝とほぼ同程度に多かった。

さらに勤務時間については、全体的に「3~6時間未満」が38.2%と最も多く、次いで「3時間未満」(30.0%)であった。特に、主婦は「3時間未満」(37.3%)、「3~6時間未満」(43.4%)の割合が高く、比較的短時間での勤務が目立つ。

グラフ4 掛け持ちのしかた

グラフ5 掛け持ちしている仕事の勤務頻度

グラフ6 掛け持ちしている仕事の勤務開始時間帯

グラフ7 掛け持ちの勤務時間数

まとめ

ここまで見てきたように、アルバイト・パート等の仕事を掛け持ちする人には、採用ターゲットとなることが多い若年層や主婦なども多く含まれている。

アルバイト・パート雇用が増加するなか、複数のアルバイト・パートを掛け持ちすることで、時間を有効活用し収入アップを図る人は増えていくと考えられる。おそらく今以上に、一般的な就業スタイルの一つになっていくだろう。

また今回の調査では、「今後も掛け持ちしたいか」も聞いたところ、全体の75.6%が掛け持ちしたいといった前向きな回答をしている。メインの仕事がある上に、空いた時間を「働く」ことに使いたいと思っている彼らは、勤労意欲も高い。また、同職種での掛け持ちが多いことから、即戦力となってくれる人材が採用できる可能性も高い。「掛け持ち希望者」を1つの採用対象者属性としてとらえれば、この層から優秀な人材の採用が期待できるのではないだろうか。

最後に、今回の調査結果をふまえ、求人原稿を作成する際にカギとなりそうな勤務条件やアピールポイントを属性別に下表にまとめた。「掛け持ち希望者」から良い人材を確保するための参考になれば幸いである。

表 属性別の条件およびアピールポイント

vol.49 : PDFダウンロード

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