前回の調査で、若年層はアルバイト全般に対して「大変そう」というイメージを持っていることがわかった。そうした印象を持ちながらも、若年層がアルバイトをする理由は何なのだろうか。
今回は、若年層のアルバイトに対する意識や目的を調査した。その過程で、アルバイトの必要性を感じている人が大多数を占めるのにも関わらず、“ある理由”でアルバイトをしていない人たちがいることが見えてきた。この調査結果をもとに若年層への理解を深め、求人広告や採用面接に活かしてほしい。
今月のポイント
・若年層はアルバイトに対して非常に意欲的
・「アルバイトは自分の成長のためにするという意見が多数。生活費や遊ぶお金のためにアルバイトをする若年層はごく少数
・アルバイトをしていない大学生は、希望に沿う仕事が見つかっていないことを理由にあげる人が多い。大学生でも働きやすいようにシフト体制を整えたり、就職活動に有利な経験ができることをアピールしたい
INDEX
調査概要
(グラフ1~4)
・調査期間:2013年6月13日~16日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国の15~25歳の男女で、下記条件を満たす人
※これまでにアルバイト・パート経験がある人
※アルバイト経験はないが、やってみたいと思っている人
・サンプル数:2,454
(グラフ3)
・調査期間:2012年4月20日~22日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国の15~25歳の男女で、下記条件を満たす人
※これまでにアルバイト・パート経験がある人
※アルバイト経験はないが、やってみたいと思っている人
・サンプル数:2,447
(グラフ5)
・調査期間:2012年12月8日~11日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:現在アルバイト・パートの求職活動をしている全国の15~34歳の男女
・サンプル数:495 ※学生は、短大・専門・大学・大学院生を含む
1 「アルバイトは経験すべきか?」に対する若年層の意識
読み取れるポイント
- 「とてもそう思う」が37.8%と最も多く、全体としては90.1%もの人がアルバイトをすることに対して肯定的に考えている
- 「まったくそう思わない」の1.1%を含め、否定的に考えている人は10%と、とても少ない
若年層の多くは「アルバイトは経験しておくべき」と考えている
調査の結果、ほとんどの若年層がアルバイトに対して意欲的であることが分かった。若年層の間では、アルバイトは「仕方なくやるもの」ではなく、「積極的に経験しておいたほうが良いもの」として認識されているようだ。
2 「アルバイトは経験すべき」と思った理由
読み取れるポイント
- 「社会経験・成長」が57%と最も多く、次いで「就職・将来」のためという理由が19%だった
- 「お金」を稼ぐためと回答した人は、わずか8%にとどまった
グラフ1の設問で「アルバイトは経験すべき」と回答した方に理由を聞いてみた。
生活のためよりも、自分の成長のため
調査結果からは意外にも、「お金」のためにアルバイトをしている若年層は少数派であることがわかった。
「お金」と回答した人も、「お金のありがたさを知ることができるから」「お金を稼ぐ大変さを知るため」といった理由をあげており、生活や遊びのためのお金を稼ぐというよりも、自分の金銭感覚を磨きたいという意識を持っているようだ。こうした背景としては、若年層は保護者等と生活基盤を共にしたり、仕送り等経済的な支援を得たりして、金銭的にあまり困っていないことが推測できる。
また、「社会経験・成長」「就職・将来」を理由にあげている人が多数を占めることからも、自分を成長させようとする若年層の姿が見えてくる。「いろいろな職種の雰囲気がわかるし、社会経済の動き方もわかるようになると思うから」「正式に社会に出て行く前の勉強のため。まだ失敗が許されると思うから」といったように、自由回答からは社会人になる前の準備期間としてアルバイトの経験を活かそうとする意識がうかがえた。
3 若年層がお金以外でアルバイトに期待すること
読み取れるポイント
- 「仕事の経験が身につく(49.8%)」「人生経験になる(48.7%)」や、「社会人としてのマナーが身につく(43.2%)」「自分の成長につながる(34.1%)」などが特に多かった
- 昨年との経年比較では大きな変化はないが、「恋愛につながる出会い」が約半分に、「友だちづくりにつながる出会い」が約3分の2に減っている
求めているのは、「経験」や「スキル」「マナーの習得」
この調査結果からも、アルバイトの経験を積むことで自分を成長させていきたいという若年層の意識がはっきりとわかる。経年変化を見ても、前年から大きな変化がないため、最近の若年層は「アルバイト=自分の成長のため」という意識が強いのだろう。
一方で、「友達づくりにつながる出会い」「恋愛につながる出会い」を期待するという回答が前年に比べてポイントを落としていた。アルバイトを通して人間関係を広げようという意識は、若年層のなかで優先順位が下がってきているのかもしれない。
4 若年層がアルバイトをしていない理由
読み取れるポイント
- 全体では「アルバイトをする時間がないから」が最も多く、約3割の人が理由としてあげている。特に専門学校生は52.0%と半数以上を占めた
- 高校生では「学校で禁止されているから」が49.3%と約半数
- 大学生では「まだバイトを探し中だから(44.1%)」「いいバイトがなかったから(22%)」が多い
若年層は「希望に沿う仕事があれば」という人が多い
アルバイトをしていない理由を見てみると、高校生や専門学校生は、学校で禁止されていたり、時間がなかったりとアルバイトに就ける状況にないという人が多い。
一方で大学生は、「まだバイトを探し中だから」「いいバイトがなかったから」が高校生や専門学校生よりも多くなり、アルバイトをできる状態にあり、したいという意思がありながらも希望に沿う仕事を見つけられないでいる人が多いようだ。若年層側の希望と雇用側の条件がマッチしていないケースが多いともいえる。
過去の調査では、学生の7割近くが1日に5時間以内のシフトで勤務していた。これは、学生は学業や学校での活動に優先的に時間をさかなくてはならない事情があるためと思われる。
また、就職活動に有利なアルバイトを希望していたり、将来につながる経験を積みたいと考えたりしていることがわかっている。
こうしたことを考慮し、短時間でもシフトに入れるように体制を整えるとともに、募集の際には学業と両立している体験談や具体的なシフトの例を示して、学校生活との両立をイメージできるようにするとよいだろう。
そして、就職活動に活かせる経験を積んだり、スキルを磨けることをアピールし、若年層からの応募を増やしていきたい。