アルバイトスタッフを“スーパーアルバイト”に育てる方法 – 株式会社グッドウェーブプロモーション 取締役 鈴木亮

  • お役立ちインタビュー
 「所詮、時給で働いている身だし」と責任感のない態度で働く若者も少なくないアルバイト。一方、同じ立場でありながら、社員顔負けの働きを見せる“スーパーアルバイト”も存在する。そんなキラ星たちを数多く育てているのが、グッドウェーブプロモーション。同社取締役で、『アルバイトだけでもまわるチームをつくろう~ディズニーじゃなくても大丈夫!』の著者でもある鈴木亮さんに、優秀なアルバイト育成法を聞いてみよう!

アルバイトだけで現場を回すチーム

「スーパーアルバイトは、弊社にとってなくてはならない存在。それは本人の資質と努力と教育の成果です」

「スーパーアルバイトは、弊社にとってなくてはならない存在。それは本人の資質と努力と教育の成果です」

グッドウェーブプロモーションは、年間1万2,000人のアルバイトスタッフを管理するイベント会社です。私たちが“ディレクター”と呼ぶ優秀なスーパーアルバイトがリーダーとなって、他のアルバイトを指揮し、アルバイトだけで構成されたチームでイベントを運営しています。この若きスーパーアルバイトたちは弊社にとって、もはやなくてはならない存在になっています。

とはいえ、彼らも最初の出発点は他のアルバイトたちと同じでした。彼らがリーダーを務められるほど伸びたのは、本人の素質とたゆまぬ努力、そして教育の成果だと思っています。

弊社が行っているアルバイト教育は、ざっくりと言えば下記のような形です。

アルバイトだけで回るチームを作る手順

(1)優秀な人材を面接で見極め、研修&トレーニングを行う
(2)その中から、優秀な人材をさらに選抜、集中的な教育を行う。同時に、アルバイトが働きやすい環境を作る
(3)信頼に足る人材に、大きな責任を伴う仕事を任せる
(アルバイトのチームのリーダーに任命し、教育や環境作り、人材選抜にも参加させる)
※(1)~(3)を繰り返し、全体の能力を底上げしていきます。

スタッフ育成の道は面接から始まっている

お客様と実際に接するアルバイトが真剣に働いてくれれば、会社にとってのメリットは測り知れません。そのために、まずは面接で質のいいスタッフを採用することから始めます。

では、具体的にどこを重視すればいいのでしょうか?

通常、アルバイト採用の際は、どんな人物かを測る“人物評価”と、何ができるかを測る“能力評価”の2軸を重視されるのではないでしょうか。しかし、アルバイトにおいて大切なのは人物評価です。極論ですが、「責任感」と「素直さ」さえあれば、その時点では即戦力にはならなくても、能力を伸ばしていくことが可能だと考えています。

素直さや責任を見極めるのに使える質問は、「今までの人生、ツイてましたか?」です。このとき、「ツイていなかった」とはっきり答えてしまう若者は注意したほうがよいでしょう。というのも、過去の失敗や行動を、運や他人のせいにする傾向があるからです。ただ、病気をしたなどの理由から答えている場合もありますから、しっかりと内容を聞いて判断する必要があります。

また、社員を採る際は、面接時の質問内容を綿密に準備するのに、アルバイトの面接となると、その場限りの雰囲気を見るだけだったり、スケジュールの都合しか聞かないという会社も多いようですね。しかし、優秀なアルバイトを採用するためには、社員面接と同様、質問内容をきちんと準備し、得られた回答をデータとして残しておくことが欠かせません。

好きな音楽、趣味、出身地をはじめ、一人暮らしなのか、両親と同居なのかなど、なにげない些細な質問にも意味があります。そこで得られた回答を蓄積していくと、その会社や業界に向いている優秀なスタッフの共通点が見えてくるのです。弊社の一例では、「ダンス」ができる人は優秀な働きをしてくれることが多いですね。体と表情を使ってイベントを切り盛りする仕事だからだと思います。

もちろんこれは業界や会社によって異なります。雰囲気で採用を決めるのではなく、向き・不向きをデータからも把握できれば、より会社に合った優秀な人材を採用できる可能性が高まります。

若いスタッフにとって、「研修」は面倒なことじゃない

採用後は、新人研修や基礎研修などの教育を行います。「研修で細かく言うと、うるさいと思われるんじゃないか」という心配は無用です。というのも、アルバイトが居心地のいい職場とは、自分が行うべきことが明確な職場だからです。

研修やトレーニングをきちんと行うことは、スタッフにとって働きやすい環境作りになり、結果的に定着率を上げることにもつながります。もちろん、トラブルやミスの発生率を最小限に押さえるためにも、研修(トレーニング)制度の導入は必須です。

ハイレベルな人材は選抜して集中教育

アルバイト教育の際、実はもう一つ大きなコツがあります。優秀な人を選抜し、彼らのレベルに応じた研修を行うのです。弊社では、その人材選抜のために年2回、アルバイトと社員全員に「360度評価」というアンケート調査を実施しています。

一般的に360度評価といえば、一人に対し全方位から評価するものです。しかし、弊社で行っているのは、上司、同僚、先輩、後輩、クライアントなどが、ポジティブな要素で優れていると思う人の名前を挙げる簡単なアンケートです。

名前の挙がった人を集計していくと、非常に興味深い結果が得られます。たとえば、上司からはウケがよくても後輩からはイマイチだったり、その逆だったり…。色んなケースがありますが、一方でどの角度からも高い評価を得る人も存在します。彼らこそ、ディレクターとして大きな仕事を任せられる人材です。彼らにはディレクター研修などを行い、さらに能力を伸ばしていきます。

360度評価の良いところは、もう一つあります。評価者が自分のまわりに常にいるため、スタッフの間にほどよい緊張感がみなぎり、自然と一緒に働く仲間を気遣うようになる点です。結果として、仲間を大切にする良いチームになっていくのです。

どんなスタッフも、磨けば光るダイヤの原石

「ちゃんと教育したり、環境作ったりすれば、どんな人でも変わります」

「ちゃんと教育したり、環境作ったりすれば、どんな人でも変わります」

弊社では、毎年多くの面接と採用を繰り返していますが、リーダーとして働く“ディレクター”にまでなれる人材は1割程度にすぎません。ただし、それは教育期間を約2~3カ月としたときのこと。1~2年もあれば、責任感と素直さを兼ね備えたスタッフであれば、絶対に伸びます。

2012年8月に労働契約法が改正され、5年間働いたアルバイトは自動的に社員にすることが法律で義務付けられましたね。しかし、そもそも5年間も一緒に仕事をしながら、社員に登用したくなる人材に育てられない会社側、社員登用の声がかからないアルバイト側、いずれにも問題があるように思えます。弊社で働くアルバイトには、所詮アルバイトだと思って漫然と働くのではなく、夢の実現や正社員雇用などの目標をもってほしいといつも願っています。

そして、未来にどんな道を行くか、選ぶのは彼ら自身です。仕事を通して成長したスタッフが、弊社で働きたいと言ってくれたときには、「いつでもおいで」と言ってあげられる会社でありたい。そうなれるように、日々努力しています。

アルバイトを定着させる環境作り

イベントの仕事は体力的に厳しいことが多いのですが、アルバイトの人たちには少しでも長くここで働きたいと思ってもらえるように、環境づくりにも気を配っています。たとえば、社員たちがムードメーカーになり、アルバイトと密にコミュニケーションをとることなどです。とはいえ、ニコニコしていればいいというものではありません。アルバイトが間違ったことをした場合は、厳しく叱る必要があります。では、その際叱られたアルバイトに離職リスクはあると思いますか?

実際は、叱られたことが原因で辞めるスタッフはまずいません。辞めるとしたら、それは信頼関係ができていない人に叱られたからでしょう。自分が「好きだ」「尊敬している」と思える人からの注意であれば、真摯に耳を傾けるのです。愛情を感じる人からの話でなければ、聞く耳を持たないのは当然のことです。

このように、アルバイトが定着するかどうかは、給料云々だけではなく、働く環境にかかっています。大切なのは、職場に信頼できる人、尊敬できる人がいるかどうかなのです。だからこそ、社員自身が人として魅力のある、信用に足る人間であることを常に意識しながら、気持ちよく働ける環境を作っています。

人を成長させる近道は“責任を与えること”

最後に、スタッフをグンと成長させる最大の教育についてお伝えしましょう。それは、責任ある仕事を任せることです。とはいえ、未熟なスタッフに大きな仕事を与えるのは不安だと感じられるかもしれません。そんなときは第一歩として、今与えている仕事の責任の重さに気づかせることから始めてみましょう。

たとえば、結婚式場のレストランを想像してみてください。どこもサービスのレベルが高いですよね。これは、スタッフが「自分が失敗したら、自分の態度が悪かったら、お客様の一生に一度の日を台無しにしてしまうかもしれない」と自覚しているからです。

でも、お客様の大事な時間、空間を提供しているのは、式場に限った話ではありません。自分の仕事の責任の大きさを教えてあげれば、きっと働き方はガラリと変わります。そして、時給のために時間を切り売りしながら働くよりも、喜びややり甲斐を感じてくれることでしょう。頑張りはじめた彼らの姿を見たときこそ、少しずつ大きな仕事を任せていけばいいのです。

もちろん、任せるからにはリスクが伴います。何か問題があった際は、会社が全責任を負うという覚悟が必要です。どこまでをアルバイトに任せられるかは会社によりますが、スタッフの飛躍を願うならぜひチャレンジしてください。

株式会社グッドウェーブプロモーション 取締役 鈴木亮

鈴木亮 / Ryo Suzuki
株式会社グッドウェーブプロモーション 取締役
大手企業のプロモーションを手掛けるイベント会社にて、日本で12,000人以上、中国を合わせると年間90,000人以上のアルバイトを管理し、指導や管理までをこなすスーパーアルバイトも多数育成。イベントだけではなく、小売店舗やサービス業へのアルバイト派遣も多数行なっている。自身が30歳まで、フリーターであった経験を活かして、非正規雇用者である20代の若者たちを立派な社会人に育て、非正規雇用者の雇用促進活動を行う。2012年8月、『アルバイトだけでもまわるチームをつくろう~ディズニーじゃなくても大丈夫!』を出版。
株式会社グッドウェーブプロモーション
http://www.goodwave.co.jp/

 

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