03 スタッフ育成にオリエンテーションブックを活用
同社では2012年より、採用したすべてのスタッフに「オリエンテーションブック」というマニュアルを配布している。その中には、まず「仲間になってくれてありがとう」というウェルカムメッセージ、そして挨拶の仕方やユニフォームの着用方法、働く上での必要最低限のルールや心得が記載され、スタッフ教育の第一歩としての役割を担っている。このようなマニュアルを全店舗で共有することで、店舗によって教育方法にばらつきが生じるのを防ぐことが可能だ。
スタッフ教育で活用する「オリエンテーションブック」(右下)と「リコグニションレコード」
「ページ数を抑えて写真やイラストを多く取り入れ、誰にでもわかりやすい内容を意識しました。特に高校生は、初めてアルバイトをする方も多いので、親しみやすいマニュアルを用意することが、未経験者もなじみやすい環境づくりにつながると考えました」
多くの高校生を活用する「すかいらーく」の今後の課題は、スタッフ用マニュアルのさらなる充実を図り、教育ツールを向上させてくことだという。
「文字ばかりの分厚いマニュアルでは、なかなか読もうという気になりません。冊子だけではなく、動画やモバイルデバイスを用いたトレーニングツールの開発も検討しています。今後は基礎的な研修も、より効率化していきたいと考えています」
また、研修のうち、フロア担当者には徹底した業務シミュレーションを行う。接客の流れを説明するだけではなく、控え室で先輩スタッフを相手に何度も練習を行い、トレーニングを重ねてから初めて現場で実践となる。ロールプレイを重ねることで、アルバイト経験のないスタッフも自信を持って接客の対応ができる。
現場でのスタッフ育成で活用しているのが「リコグニションレコード」シートだ。例えば「オーダーがとれる」といった業務項目を書いて、それが達成できたらシールを貼り、業務上の記録をつける。新人スタッフ自身が成長を実感でき、教える側も課題が見えるため、お互いの目的意識やモチベーションを高めることが期待できる。
04 最近の高校生の上手な褒め方・導き方
高校生スタッフとコミュニケーションをとる上で、現場の社員はどのようなポイントに気をつけているのだろうか。
「スタッフに対して、自身の価値観を押し付けないことが何よりも大切です。同じ15歳でも、時代や環境によって個性や性格は異なります。『自分が高校生の時はこうだった』という経験はまったく役に立ちません」
同社では、高校生スタッフと年齢の近い先輩スタッフに、メンター的な立場でサポートしてもらう方法も取っている。わからないことや困ったことが起きた時に、すぐ相談できる人を決めておくことが、高校生スタッフでも安心して働ける環境づくりにつながっているのだ。
もちろん、マネージャーやバイトリーダーからコミュニケーションを取ることも忘れてはならない。業務の話だけに終始せず、学校や私生活などの雑談も意識的に取り入れ、より円滑な交流を図っている。
「最近の子はとても恥ずかしがりな面があって、みんなの前で直接褒めると、照れたり戸惑ってしまったりするスタッフも多いので、褒める時は日報に『○○さん、●●の業務がよくできていました』とコメントを残すようにしています。褒められた内容が他のスタッフの目にも触れるため、本人も嬉しくてやる気がアップします」
一方で、注意の仕方のコツは「頭ごなしに叱らないこと」。人前で頭ごなしに叱っても反発したり、響かなかったりでよい効果は望めない。近年の高校生は傷つきやすく繊細なタイプが多いように見受けられるため、強い口調で指導をするのは得策ではない。個別の場を設けて、丁寧に理由を説明してあげると伝わりやすいという。
高校生に限らず、「居場所がない」「認めてもらえない」という不満はバイトを辞める理由となりやすい。良いスタッフに長く働いてもらうためにも、スタッフの性格や個性に合った接し方を心がけていきたい。