【店長対談】ブックオフ×鳥貴族 ~スタッフ育成にかける熱い想い

  • 店長対談

アルバイト・パートスタッフの指導や育成にはどのようなポイントがあるのでしょうか。中古書店「BOOKOFF(ブックオフ)」の展開及び新規中古業態の開発・運営を手がけるブックオフコーポレーション株式会社の店長、焼鳥店「鳥貴族」を展開する株式会社鳥貴族の店長が集まり、スタッフ教育について熱く語り合いました。日々、スタッフ・社員教育に携わる方は、ぜひ指導のヒントにしてください。

 

参加者

ブックオフコーポレーション株式会社

ブックオフコーポレーション株式会社

参加者: 清川 貴志さん(きよかわ たかし)

清川 貴志さん(きよかわ たかし) 33歳

店舗名/BOOKOFF SUPER BAZAAR 409号川崎港町
役職/店長

参加者: 大野 翼さん(おおの つばさ)

大野 翼さん(おおの つばさ) 33歳

店舗名/BOOKOFF SUPER BAZAAR 大宮ステラタウン
役職/店長

 


株式会社 鳥貴族

株式会社 鳥貴族

参加者: 大木 大樹さん(おおき だいき)

大木 大樹さん(おおき だいき) 26歳

店舗名/鳥貴族 市川店
役職/店長

参加者: 久米 章太さん(くめ しょうた)

久米 章太さん(くめ しょうた) 27歳

店舗名/鳥貴族 幡ヶ谷店
役職/店長

01. スタッフ構成と採用について

−−−まずは店舗のアルバイト・パートスタッフの構成を教えてください。

ブックオフの清川氏(左)と大野氏ブックオフの清川氏(左)と大野氏

ブックオフ 大野(以下、B大野) : 大宮ステラタウン店は、店舗スタッフ約150名のうち、140名がアルバイト・パートスタッフです。大まかに、主婦が4割、フリーターと学生が3割ずつです。

ブックオフ 清川(以下、B清川) : 409号川崎港町店も、大宮ステラタウン店とほぼ同じ従業員数とスタッフ構成ですね。シフトは朝の時間帯は主婦が多く、昼はフリーター、夜は学生、という感じで彼らの働きやすい時間帯に合わせて組んでいます。

鳥貴族 久米(以下、T久米) : 「鳥貴族」は、開店前に焼き鳥などの仕込みを専門に行うスタッフと、営業中のキッチン・ホール業務を担うスタッフに分かれています。鳥貴族 幡ヶ谷店のアルバイト・パートスタッフ40名弱のうち、約3分の2がベトナムやネパールからの留学生です。

鳥貴族 大木(以下、T大木) : 市川店でもホールスタッフの半数はベトナム人ですね。

 

—「鳥貴族」では外国人スタッフを多数採用しているのですね。外国人スタッフのメリットや、採用・育成する上でのポイントはありますか?

T久米 : 都心は特に日本人の応募が集まりにくく、既存の留学生スタッフの紹介で留学生が増えていきました。留学生は日本へ学びに来るだけあって、アルバイトに対しても真剣さが違いますね。日本人以上に頑張ってくれる人が多いと感じます。しかし、留学生は日本語に習熟していない人もいるので、微妙なニュアンスの違いを教えることも少なくありません。例えば、お客様がおっしゃる「大丈夫です」という言葉は、状況によって大きく意味が変わることを教えています。留学生とコミュニケーションを取るために、私もベトナム語をかなり覚えましたよ。言語以外に、仕事に対する考えなども日本人とは違いますので、彼らの育成はまだまだ試行錯誤しながらやっています。

T大木 : 外国人留学生の採用時は業務の内容上、ひらがな、カタカナが読めるかどうかが一つの基準になります。あとは、笑顔で「少しお待ちください」と言える人なら、たとえ日本語が流暢に話せなくても、活躍してくれる可能性が高いと判断します。「鳥貴族」は元気の良い接客を大事にしているので、私は面接時に「あいよ!」や「ありがとうございます!」といった声出しをお願いすることも。そこでふるいにかける訳ではなく、「元気なお店なんだ」と理解してもらい、入店後のギャップを減らすことが狙いです。

T久米 : 留学生は普段から笑顔でいるような人が良いんですよね。日本人の感覚だと、愛想笑いをしたり仕事で笑顔を作ったりすることはよくあることだと思うんですが、留学生は異なる文化で育ってきていますから、その感覚を教えるのは非常に難しいことなんです。

B清川 : なるほど。弊社は書籍を扱う業態なので、漢字の読み書きができることが必須能力になります。そのため、外国人留学生に対しては、残念ながら募集のハードルが上がってしまうのです。ところでスタッフの採用に関して言えば、大野さんの店舗は全国のブックオフの中でもトップクラスの採用率なんですよ。

B大野 : 私は「人柄採用」をモットーにしているので、面接で良いと思った人はどんどん採用します。採用率は85%くらいです。採用しすぎと思われるかもしれませんが、スタッフがたくさんいれば、忙しさがピークになる時間帯に備えて、最適なシフトを組むことができるんです。これまでブックオフではフルタイムで働ける人を採用する傾向にありましたが、最近は主婦の方を中心に「一日2時間~4時間だけ働きたい」という方も多く、そういう方も採用するようにしています。シフトとしては短時間ですが、長期的に働いてくれる人たちなんですよね。だから、10年働いてもらえるようなキャリアプランや待遇を考える必要があると感じています。

02.スタッフの教育システム

−−−アルバイト・パートスタッフに対してマニュアルや研修はどのようなものがあるのでしょうか?

鳥貴族の久米氏(左)と大木氏鳥貴族の久米氏(左)と大木氏

T大木 : 弊社では、アルバイトスタッフ専用のマニュアルブックを用意し、入店から4日間を研修に当てています。まずは「遅刻をしない」「挨拶はしっかりする」といった基本的な心得から、料理の出し方や席への誘導の仕方まで学びます。弊社は焼鳥店なので、鶏肉の部位をはじめとする商品知識もレクチャーするために、マニュアルには写真やイラストを多く使っています。外国人留学生向けに、ベトナム語や中国語のマニュアルもありますよ。これらの内容は基本的に店長がマンツーマンで教えます。最終的に、焼鳥のタレの種類などのテストを実施して、受かったら現場に入ってもらう流れとなっています。

B大野 : 弊社でも、オペレーションマニュアルやトレーニングチェックリストなど4つの項目に分かれた冊子を使用しています。「鳥貴族」さんと違うのは、社員とバイトで分けておらず、同じものを使っているところですね。

T久米 : そのほかにも、店長が休みの時に代わりに対応できるようになるための講習もあります。研修は1日3時間ずつ計3日間かけて行われ、会社の理念や現金管理、安全管理について学ぶことで、アルバイトスタッフでも店長の代わりとして活躍できるようになります。

B清川 : 弊社の場合は、出勤初日に仕事をする上でのルールの読み合わせを行ったら、基本的にはすぐに現場に入ります。先輩スタッフがマンツーマンで指導しながら、実際の業務を見て学んでもらうスタイルです。先輩と一緒に仕事をすることで、仕事の内容だけでなく、ブックオフの働き方や考え方を肌で感じてもらうことに意味があると考えています。

03.店長それぞれの現場教育モットー

−−−新人教育で心がけている点や実施していることはありますか?

座談会の様子

T久米 : 私は現場に出る前にシミュレーション教育を実施することですね。忙しいとなかなか時間を確保するのが難しいのですが、スタッフが自信を持って対応できるように可能な限り行うようにしています。

T大木 : そうなんですね。同じ鳥貴族ですがうちは幡ヶ谷店と違って、シミュレーションは行いません。基礎知識を教えたら、あとはホールに出ている新人の対応を見守るスタイル。細かな教育方針は、会社よりも各店舗の店長によるところが大きいですね。

B大野 : 弊社では、就業規則とともに、きちんとお客様の目を見て、笑顔で対応する「スマイル&アイコンタクト」という接客ルールを覚えてもらっています。商品知識よりも、働くことに関するモラルや接客の基本を知ってほしいという思いが強いですね。

 

—褒める時や叱る時は、みなさんどのようなことを意識されているのでしょうか。
T大木 : 時間を置かないことですね。私は、お客様の前でもスタッフを褒めます。そうすると、お客様から「いま店長から褒められたじゃん」と声をかけられてコミュニケーションが生まれますよね。叱る時も「さっきの接客はすごく良かったけど、ちょっと片付けが遅かったよ」と、先に褒め言葉でワンクッション置くほうが、相手に響きやすいと思っています。

T久米 : 最初のうちは、「出勤2日目、よく来てくれた!」と大げさなくらいに褒め続けると、スタッフのモチベーションも上がって、次のステップに進みやすくなりますね。仕事ができるようになったら、「さすが!」と相手を認めるような声のかけ方をします。仕事の上達具合やその人の性格を見て、褒め方を変えるんです。叱る時も、相手が男性か女性かで、感情の出し方を変えています。

B清川 : 私も久米さんと同じで、過剰なくらいに褒めるようにしています(笑)。あとは、スタッフ皆がいる朝礼や終礼で「名指し」で褒める。スタッフの数が多いので、店長がしっかり見ていることを伝えて、店舗への貢献度を感じてもらいたいんです。叱る際のコツは、ミスなどが起きてから注意するまでのタイムラグをできるだけ短くすること。時間が経つと覚えていないこともあるので。ただ多くの場合、叱る時は私から直接言わずに、アルバイトリーダーから伝えてもらうようにしています。日々一緒に仕事をしている現場のリーダーから言われるほうが、本人にしっかりと響くと思うんです。

B大野 : 褒めること自体が大事なので、理由はどんなことでも良いんです。叱ることは、自分自身の性格としても基本的にありませんね。もちろん、無断欠勤や人の迷惑になることがあれば注意しますが、その際は感情をぶつけずに「本人にとって何が不利益になるのか」を冷静に伝えるように気を付けています。例えば、無断欠勤をした人がいれば、「君はこれまで真面目に働いてきたのに、たった一回の無断欠勤で信用を失うんだよ。それは君が一番損をしているんじゃないの?」という風に伝えます。

04. スタッフに対する想い

−−−現在アルバイトをしている方は、収入だけでなく、仕事のやりがい・満足感も強く求めているようです。そんな彼らに、どのような意識を持って接していますか?

座談会の様子

B清川 : スタッフがすぐに辞めてしまう理由として、よく耳にするのが「仕事を教えてもらえない」というもの。店長や社員が「忙しいから後で」と突き放してしまうのは、アルバイト・パートスタッフのモチベーションを下げ、離職につながりやすくなるようです。だから、スタッフに何か質問された時は、どんなに忙しくても平気な顔をして、その場で答えるようにしています。

T大木 : 「忙しいから後で」と言うと、「自分が必要とされている」という意識が薄くなって、やりがいを感じられなくなってしまいますよね。私も内心は焦っていても余裕があるように見せることを意識しています。

T久米 : そのスタンスは私も同じです。あとは言葉だけでなくて、いかに店長自身が「頑張る背中」をスタッフに見せられるか。それで「店長みたいになりたいな」と思ってくれるのが理想ですね。

B大 : 野他の3人と違って、私の場合は「今すごくしんどい!」とストレートに伝えてしまいます(笑)。そうやって本音で話すことで、スタッフとの信頼関係を築き、社員やアルバイトの垣根を越えた職場環境を整えていきたいです。

B清川 : 信頼関係はすべての基本ですよね。大げさな例かもしれませんが、スタッフが私と接する時に、「自分の父親と接しているような感覚」を覚えてくれる関係性を作るのが理想です。それに、130名のスタッフがいたら、130通りの考え方があると思うんです。マネジメントする側はもっと「彼らの人生を預かっているんだ」という自覚をもつことが大切だと思います。せっかくスタッフとしてうちに来てくれたんだから、仕事の面白さや人間性の向上など、お金以外のものをつかんでほしいなと思います。

—褒め方や叱り方を意識しながら、スタッフ一人ひとりとコミュニケーションを取ることが、両社に共通した現場教育のポイントのようですね。また、店長のみなさんが、スタッフたちのために真摯な思いで現場に立たれているのが伝わってきた座談会でした。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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