留学生アルバイトとの上手なコミュニケーション術

  • コミュニケーション・人間関係

「外国人留学生雇用」をテーマに送るシリーズ。前回に続く第2弾は、コミュニケーション編です。日本学生支援機構の調査によれば、2013年の留学生の出身国の上位5位は、上から「中国」「韓国」「ベトナム」「台湾」「ネパール」となっており、特にベトナム人留学生数は、前年比4割増となっています。そこで、今回はベトナムやフィリピン、インドネシアなどを対象に、年間700名近い留学生をサポートする企業「JELLYFISH(ジェリーフィッシュ)」の古谷功介さんに、留学生との上手なコミュニケーション術を伺いました。

東南アジアからの留学生が急増中! アジア諸国のお国柄は?

出身国で性格の傾向に違いが表れることがあります出身国で性格の傾向に違いが表れることがあります

 近年になって東南アジアからの留学生が増加している背景には、東南アジアへの日本企業の進出があります。将来、自国での就職に生かすために日本の接客サービスや語学を学ぼうと、日本への留学を希望する子どもたちやその親も少なくないというわけです。

私たちは、そんな東南アジアを中心に、世界各国から来日する留学生の生活サポートを行っています。

留学人口の増加にともなって、アルバイト市場でも中国や韓国のみならず、東南アジア国籍の留学生たちが急増しています。アジア圏の留学生たちは、先述の通り「自分の将来のため」など働く目的が明確で、向上心が強く勤勉な人が多いのが特徴です。

今後、留学生の雇用を検討するなら、中国や韓国はもちろん、東南アジアの人材も見逃せません。アジア圏の人々は一般的に家族や友人とのつながりを大切にする文化がありますが、国民性はそれぞれ異なります。アルバイトとして雇った際、上手にコミュニケーションをとれるよう、まずはアジア圏の“お国柄”についてご紹介しましょう。

アジア圏のお国柄

● 中国&韓国
合理的な判断力を持ち、チーム行動は苦手だが、行動力がある。
● ベトナム
シャイで恥ずかしがり屋。プライドはやや高め。まじめで、特に女性はよく働く印象。
● ネパール
ベトナムに比べればおおらかで、ほがらかな印象。純粋で素直な人が多い。
● フィリピン
明るく、自分からいろんなことを話しかけてくる。日本語の上達スピードが早い。英語ができる人も多く、コミュニケーションが取りやすい。
● インドネシア
明るい。実家が裕福で、仕送りで生活をする人が多く、アルバイトはあまりしない傾向。こちらも英語のできる人が多いのが特徴。
● 台湾
気さくで人懐っこく、協力的な印象。誰にでもフレンドリーに接する。やや大雑把でユルいところも。

上記のような“お国柄”はありつつも、当然のことながら性格は人によって異なります。留学生を受け入れる前に、出身国の習慣などを調べておくことはもちろん、その人自身の個性を見極めることも重要です。

留学生とのコミュニケーション術

留学生にはどんどん話しかけてあげましょう留学生にはどんどん話しかけてあげましょう

 出身国を問わず、留学生に共通しているマインドもあります。例えば、多くの留学生は「日本人とたくさん話したい!」と考えています。シャイな人に見えても、どんどん話しかけてください。日本語を学びに来ている留学生は、きっとうれしいはずです。

話題は、何気ないことで構いません。家族のことなどは、「アルバイトスタッフに対して、プライベートの領域に踏み込んでいいものだろうか」と躊躇する人もいますが、東南アジアの留学生たちは両親や兄弟のことでも喜んで話してくれます。ただし、母国の悪い点を指摘されたり、自分の信仰を否定されたりすると、たとえ冗談であっても気分を害してしまうので注意しましょう。

そして、「友達を作りたい!」という思いも、異国にやってきた留学生たちの共通項。お花見やバーベキュー、懇親会など、スタッフ同士が友達になれる機会を作ると、積極的に参加してくれます。留学生との距離を縮めるには、イベントを企画するのも有効です。

また、日本人が思う以上に、彼らは信仰を大切にしていることがあります。お祈りの時間などが必要であれば、勤務時間内であっても理解を示してあげるのが、留学生たちとの信頼関係を築くための近道です。

日本語がわからない留学生との接し方

留在留期間が長く、日本語への理解度が高い留学生は、日本人と同じように接しても信頼関係を深めていくことができますが、来日して間もない留学生たちとは接し方に迷われる店長も少なくありません。

彼らは、ひらがなやカタカナは読めても、会話の厳密な聞き取りや漢字の読み書きまではわからないことが多いのです。語学力が低いうちは、複雑な接客対応などはできないため、初めは清掃や在庫管理など、覚えれば一人で作業できる単純な業務を任せるとよいでしょう。

スタッフ間のコミュニケーションを円滑に行うためには、職場の日本人スタッフと、留学生と話すときのコツを事前に共有しておくことが大切です。また、留学生受け入れにあたり、受け入れの準備をしておくこともオススメします。

留学生と話すときのコツ

● ゆっくり、はっきりと話す
● ジェスチャーを交えて話す
● ひらがな、カタカナで筆談をする

留学生を受け入れる環境の準備

● 会話をしながら使えるように、辞書を数冊用意しておく
● スタッフのスマートフォンに翻訳アプリをインストールしておく
● マニュアルの重要な箇所は留学生の母国語に翻訳しておく
● 飲食店の場合、メニュー表には番号を振って聞き間違いを防ぐ など

留学生のアルバイトには「常識」からレクチャー

「言語の違い」と同様に、留学生たちがアルバイトの現場で困惑しがちなのが「文化の違い」です。海外の人から見れば、日本の職場には独特のルールや暗黙のマナーなども多いのです。

そこで、私たちが留学生をアルバイト先の企業に紹介するときは、必ず以下のようなことを教えています。

留学生アルバイトに教えておくべきこと

● 始業時刻に遅れてはいけない
● 20分前には勤務場所に到着する
● 休む前には必ず連絡を入れる
● 勤務時間中は携帯をいじってはいけない
● 勤務時間中に勝手に座ってはいけない
● わかったら「はい」と答える など

上記は、日本人にとっては当たり前のことですが、留学生たちに伝えると驚かれます。つまり、留学生を雇用する場合は、日本では常識と思われることも、基礎からきちんと教えてあげる必要があるのです。

日本人同士なら「見よう見まねで覚えてもらう」「言わなくても察してもらう」という方法もありますが、外国人留学生たちには通じません。きちんと言葉にして、一つずつ教えてあげてください。

留学生を上手に「叱る」「褒める」ためのコツ

「叱るときは個別に。褒めるときはみんなの前で」がポイントです「叱るときは個別に。褒めるときはみんなの前で」がポイントです

 お互いに言葉が通じない場合、「叱り方」「褒め方」にもちょっとした工夫が必要です。日本の若い世代は怒られ慣れていないので、ガミガミ叱るのはNGといわれますが、留学生に対しては逆なのです。

叱るときはまず、顔や声、ジェスチャーで怒っていることを示してください。感情を抑えて淡々と注意しても、日本語が未熟な留学生は叱られていることがわかりません。態度で怒りを示しつつも、口調はゆっくり、ジェスチャーや筆談などを用いて、留学生が叱られた理由を理解できるようにするのがポイントです。

また、外国人は日本人が思う以上にプライドや体面を重んじることがあるため、大勢の前で叱り飛ばしてしまうのは絶対NG。バックヤードなどで個別に叱り、指導するのがベストです。

反対に、評価をするときはスタッフみんなの前で褒めてあげましょう。日頃の頑張りを認めて表彰することで、働くモチベーションを維持できます。また、生活費のためにアルバイトをしている留学生にとっては、勤務態度に応じた昇給の約束も、やる気を高めるのに最も効果的な手段の一つです。

過剰な手助けに要注意!

過保護にならないよう気を付けてください過保護にならないよう気を付けてください

 留学生スタッフを雇う店長は、留学生が日本人よりもずっと気を遣う存在なので、ついルール違反を見逃してしまったり、慣れない日本での生活だからと業務範囲を超えて過剰に世話を焼いてしまったりすることも少なくありません。

しかし、こうしたことを繰り返すと、留学生たちは好意に甘えてワガママになり、同じ職場で働く日本人スタッフからも不満が噴出しかねません。常に見守りながらも、一定の距離感は保つようにしてください。

留学生を雇ったことのない店舗や企業にとっては、試行錯誤の連続になります。まずは職場の受け入れ環境を整え、辞書を片手に話しかけてあげることから始めてみてくださいね。

 

JELLYFISH留学事業部 古谷功介

古谷 功介 / Kosuke Furuya
留学事業部・学生支援グループ・グループマネージャー
2010年5月に当時通信代理事業を主体としていた株式会社JELLYFISHに入社。入社後、正社員、マネージャーと昇格。教育・留学事業への転換に伴い、日本国内での留学生支援業務(アルバイト支援、寮の運営、学生管理)の立ち上げに携わる。現在は、留学事業本部の責任者として活躍中。

株式会社JELLYFISH
http://www.jellyfish-g.co.jp/

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