若者ほどITに詳しい――これってホント?
若者がネットに精通しているというのは大きな間違いです
バイトテロを巡る論議において、「若者の方がネットに詳しいはずだから、うまく使いこなせるはず」と考える年配の管理者、店長も少なくありません。確かに、大学生の中にも、中高年と比べて「自分たちの方が恵まれたIT環境で育ってきた」と誇る若者もいます。しかし、その決めつけに私は危険を感じるのです。
私はキャリアカウンセラーや大学教員という仕事を通じて、私は10代の学生から60代の経営者層まで何千人も、幅広い年代とカウンセリングなどを通して接してきました。その実感として、最もネットリテラシーが高いのは40代以上~50代ぐらいの中高年です。彼らは極めて貧弱だった日本のインターネット草創期の苦労を経験した世代なのです。
一方、今の若者はネットリテラシーが低い。生まれた頃からパソコンや携帯電話で、あらかじめ用意されたネットサービスへ簡単にアクセスできる環境が整っていました。「SNSへの書き込みが不特定多数に見られている」という意識がなく、危機感もありません。
ネットの仕組みを身体でわかっているわけでもなければ、怖さも知らない。全体的に見たら、ITスキル、リテラシーは年代が若くなるにつれ、低下する一方だと思います。そんな若者が多いからこそ、バカな行為を平然とする者が出てくるのです。
もちろんITリテラシーがまったくない店長も問題です。「若者の方がネットに詳しい」という誤った認識を持っていると、バイトテロの被害をさらに拡大させかねません。店長クラスには、「インターネットとは世界に開かれたものであり、SNSを使う際は十分に気をつけるべき」と、若者スタッフに啓蒙していくことが求められます。バイトテロを防ぐため、店長自身がネットリテラシーを高めていきましょう。
そのためには、スタッフが使っているSNSを知らずして店長が教育はできないでしょう。ひいてはバイトテロ対策も難しい。「苦手だから」「触ったことがないから」と敬遠してばかりではいけません。
プログラミングやネットワーク技術などの専門的な知識までは求められてはいませんし、店長自身がSNSに参加しなくても大丈夫。パソコンやスマートフォンなどでインターネットを閲覧し、代表的なTwitterとFacebook、LINEがどのようなものかを理解していれば十分なのです。
採用のタイミングがバイトテロを防ぐ最大のチャンス
バイトテロが引き起こす深刻な事態を意識させることが重要です。
バイトテロを防ぐための具体的なポイントについてお話ししていきましょう。バイトテロは、いつでも起こり得るもの。スタッフがネットリテラシーを自然に身に着けるまで待っている余裕はありません。
採用時には、できればバイトテロを起こした場合の損害賠償を約束させる誓約書を取り交わすのが望ましいと思います。バイトテロが起きた場合に起こり得る店舗復旧に必要な清掃や消毒、商品の廃棄や交換、休業補償などを、当事者の負担で行うことを明文化しておくのです。
これは、トラブル時の補償というよりも、「スタッフ自身に内容を書かせる」という行為そのものが大切だと私は考えています。厳しい賠償内容があっても、ただサインするだけではスタッフの意識には残りません。自分で文言を書き、意識することで大きな抑止効果が期待できます。
忙しいからといって、誓約書をはじめ資料やマニュアルを「書いておいて」「見ておいて」で済ませていないでしょうか。そのような形骸化した対策では、バイトテロのリスクは回避できません。
さらに安心なのは、スタッフが利用中のSNSも明記してもらい、可能であればアカウントを把握して、サービスの退会や非公開アカウントへの移行を促すこと。ただし、これは強制するとプライバシーの侵害になってしまうので、慎重な対応を心掛けてください。
誓約書と同様に、実際にアカウントを確認することよりも、「企業や店側はあなたがSNSを利用していることをしっかり把握しているよ」という態度を表明することこそ重要なのです。店長は、バイトテロの芽にしっかり目を光らせる姿勢を常に見せていきましょう。