具体的な「課題」「報酬」「交流」の設定事例
ここで「課題」「報酬」「交流」の具体的な設定事例と、スタッフにもたらす心理効果を見てみましょう。例えば「接客の質を向上させたい」という「課題」であれば、「報酬」と「交流」はこんな風に設計することができます。
課題:サービスの質を向上させたい!
・報酬例:
毎月、お客様アンケートで最も高評価だったスタッフに、昇進につながるバッジを贈呈。加えて、SNSグループ内でも発表。
(接客を頑張れば、昇進するチャンスになる! みんなの前で褒めてもらえる!)
・交流例:
SNSグループ内で接客のコツ、うまくいった事例などを共有する。
(自分が学んだことが他のスタッフの役に立ってうれしい)
投稿に対してコメントなどのフィードバックがもらえる。
(学んでよかった、もっと勉強しよう!)
顧客サービスの向上を目指すなら、アルバイトスタッフに一定の裁量を与えるのも「報酬」として有効です。これは、居酒屋「塚田農場」などを運営するエー・ピーカンパニーが、スタッフに客単価4,000円の1割にあたる400円分を無料でサービスできる権限を与えています。また、料理レシピ投稿サイト「クックパッド」で、レシピを参考に料理を作ったことを報告する「つくれぽ」が、レシピ投稿者の大きなモチベーションとなるように、他者からの賞賛やフィードバックも心理的な報酬になります。「認められたい」という気持ちが人一倍強いともいわれる若者層には、より効果的かもしれません。
スタッフのモチベーションアップにつながるなら、どんなものでも報酬になりえます。どんな報酬を設定するかは、店長の腕の見せ所といえるでしょう。まずは、クリアすべき「課題」に合致した「報酬」を設定する。そして、褒められたりフィードバックをもらえたりする「交流」を通すことで、スタッフのチャレンジ精神はますます高まっていきます。「課題」「報酬」「交流」が循環していくと、新たな「課題」が見えてくるはずです。
ゲーミフィケーション運用は“長い目で”
継続して運用することが大切です
ゲーム的要素とソーシャル的な要素が組み合わさったことで、職場はやりがいや達成感を得られる場であると同時に、スタッフ一人ひとりが主人公として活躍を認められ、褒められる場となります。その結果、主体的な行動の促進やモチベーションアップにつながっていきます。
ただし、ゲーミフィケーション運用の効果は、長い目で見る必要があります。いい循環を生む仕組みづくりには時間がかかるため、継続することが大切です。でも、スタッフ一人ひとりが「みんなに認められている」「みんなが自分を必要としてくれる」と実感できれば、職場の雰囲気がぐっとよくなっていくはずです。
すでに述べた通り、ゲーミフィケーションはSNSを使い慣れた若い世代のスタッフにはなじみやすい手法です。また、全員のソーシャル参加が必須ですから、少人数のほうが導入のハードルが低い手法でもあります。コンビニ、飲食店など、若いスタッフを抱える店舗はぜひ、試してみてください。
岡村 健右 / Kensuke Okamura
ループス・コミュニケーションズコンサルタント
1975 年大阪府生まれ。SEとしてグループウェア開発などに携わり、2007年よりループス・コミュニケーションズにてソーシャルメディア全般のコンサルティングを担当。Facebook、Twitter だけでなく、ソーシャルゲームのアナリストも担当。共著に『ソーシャルメディア・ダイナミクス』(毎日コミュニケーションズ)、『ゲーム産業白書Decade』(メディアクリエイト)などもある。
ループス・コミュニケーションズ
http://looops.net